行政書士の独立開業で失敗しないために知っておきたいこと

官公庁へ提出する許認可関連の書類や契約書、遺言書等の書類は年々複雑化しており、素人が付け焼刃で作成するには時間的にも精神的にも負担がかかるようになってきました。そのため、書類作成のスペシャリストである行政書士の仕事がどんどん増えてきています。さらに、弁護士や税理士の士業と比べ資格取得の難易度が低いことから、専業はもちろんのこと、キャリアチェンジや副業としての開業も注目を集めています。それでは、実際に行政書士として開業して成功できるのか、開業の費用はどれくらいなのか、顧客はどうやって集めているかなど、気になるところを解説していきましょう。

行政書士は独立開業すべきなのか

そもそも行政書士として独立開業した場合、年収等はどんなものなのでしょうか。行政書士の資格を取得した人の開業している割合や開業のメリット・デメリットを見てみます。

行政書士の独立開業する割合

行政書士試験の合格者数は年4,000~6,000人ですが、新規登録者数は毎年約2,500件と開業や勤務行政書士として資格を使う人は約半数となっています。また登録抹消者数は毎年約1,700件ですので、年間約800件登録者が増えていることになります。この数字は開業行政書士、勤務行政書士どちらも含まれているのですが、ここ数年800件ずつ増加傾向が続いていることから、行政書士の資格を取得したらそれを活かして仕事にしているケースは非常に多いことがうかがえます。なお、総務省が発表している平成28年のデータでは新規登録者2,526件に対し登録抹消者数は1,762件でした。

参考 総務省HP

行政書士が独立開業する場合のメリット

一番のメリットは他業種と比べて開業コストが低いこと、そして他士業と比べ実務経験や顧客対応等、サービス力を維持するための時間が少ない点です。まず開業コストですが、事務所や店舗を持たず自宅で始めることもできますし、設備投資に関してもPCをはじめとした事務機器がある程度揃っていれば当面の業務は問題なくおこなえます。また、士業であるため最新の法令等を常に勉強することは当然ですが、高度で幅広い法律知識と経験を必要とする弁護士や税務だけでなく会計や資金繰り、ライフプランまで対応している税理士や会計士よりは業務の範囲がある程度限られているため、他の士業より開業はしやすいといえるでしょう。

行政書士が独立開業する場合のデメリット

ライバルが多い、これが最大のデメリットです。実は、行政書士の登録資格は行政書士試験に合格することだけではなく、弁護士や税理士の資格でも登録をすることができるのです。またこれらの資格は行政書士の業務(官公庁への許認可申請や契約書の作成等)と非常に相性が良く、顧問契約をしている弁護士や税理士等へワンストップで依頼するということがよくあります。開業をするときにはこのデメリットにどう対応するかを十分に考えておきましょう。

Point! ライバルは同業者プラス他の士業と非常に多い。開業前に対策を。

行政書士の年収

開業で一番気になるのは、どれくらい収入があるかではないでしょうか。行政書士の年収は地域によっても変わりますが、平均で約600万円と言われています。この数字はここ数年変わっていないのですが、その代わりに稼げる行政書士(約2,000~3,000万円)と稼げない行政書士(約300~400万円)に二極化している傾向があります。行政書士として開業すれば必ず今の収入より上がるわけではないことは頭に入れておきましょう。

Point! 行政書士の年収は平均600万円。ただ格差が大きいのには注意!

行政書士として独立開業するために準備すること

無事行政書士の資格を取得したとしても、すぐに収入を得られるわけではありません。まずは開業というハードルが待ち構えています。ここをしっかり準備しておくのか、勢いだけで開業してしまうかでは雲泥の差が出てきますので、スムーズに開業するには事前にどのようなことをしておけばいいのかを押さえておきましょう。

開業資金の準備

開業をするときにまず考えなければならないのが、開業資金の計算とその準備です。自宅で開業するのか、事務所を構えるのか、ホームページは作るのか等々で変わってきますが、おおよそ下記の金額がかかります。

 

 

①~④は必須の費用ですので、最低でも60万円、⑤や⑥まで考慮すると、200~300万円ほどが必要になります。資金の準備は自己資金でできるのが理想ですが、自己資金のみでは厳しい・・・という場合は、銀行や日本政策金融公庫が開業資金の貸し付けも行っていますので、相談してみるといいでしょう。ただし返済計画や事業プランは自己資金のみでするよりもシビアに立てなければなりません。

Point! 開業にかかる資金は最低60万円~。自己資金がベストだが開業資金の融資もある。

専門分野の決定

行政書士の主な業務は官公庁への申請業務や各種契約書の作成等ですが、その幅は非常に広く、個人ですべてをカバーするのは不可能と言ってもいいくらいです。ですので、ある程度専門分野を決めておいて、そこから業務の幅を広げていくといいでしょう。比較的参入しやすい分野は下記のものがあります。

①建設・産業廃棄等

行政書士としては最も需要が高く、安定して収入を得られる分野です。行政書士として最初の仕事がこの分野だったという人も少なくありません。ただ、同業者との競合もかなり多いため、価格競争が起こりやすいという面もあります。

主な業務は建設業許可申請・産業廃棄物許可申請等です。

②飲食店

飲食店は繁華街に集中していることが多く、狭いエリアの中で多くの潜在顧客が見込めることから、効率よく安定した収入を得たい場合に対象となる分野です。また、他分野と比べ専門性が高いため、ライバルがそれほど多くない点もメリットです。ただ、申請書の作成には店舗の図面作成等特殊な知識が必要、申請許可が下りるまで営業が開始できないため書類の不備で営業開始日までに許可が下りなかったときのリスクなど、独特のデメリットもあります。この分野を専門にしたい場合は、申請先である警察関係者や飲食店に強い行政書士さんに話を聞いてみるのが良いでしょう。

主な業務は飲食店営業許可申請・深夜酒類提供飲食営業許可申請等です。

③運送業・自動車販売業

新規参入業者が多いため、開業したての行政書士でも新規顧客を獲得しやすい分野です。また専門性もそこまで必要とせず、建設・産廃と同様安定して収入を見込めます。ただ競合が多いことも同様で、他業種と比べ業務1件当たりの単価がそれほど高くないのがデメリット。いかに効率よく業務をさばけるかがこの分野のカギになるでしょう。

主な業務は貨物運送事業許可申請・車庫証明申請・道路使用許可申請等です。

④外国人

最近はコンビニの店員さんが外国人というのも珍しくなくなりましたよね。それだけ外国人労働者が身近になった分、就労ビザの申請は需要が大きい分野になってきました。これに付随して、留学ビザや帰化、永住権の取得など行政書士へ対する需要が増えてきています。外国人相手という特殊な要件をクリアできれば、ライバルが少ない分野として検討してもいいのではないでしょうか。

⑤その他

その他で注目されている分野としては、会社設立関連・相続関連等があります。ただ、これらは会社法や民法など法律関連の知識が必須な上、他士業との相性が良いため、そういった事務所とのパイプがないのであればあまりオススメできる分野ではありません。ただ前職が士業の事務所勤務だった等のパイプがあるのであればアドバンテージが取れる分野ではありますので、狙い目と言えるでしょう。

どの分野をメインにするのか、ご自身のキャリアや知識のある業種を考えて選ぶといいでしょう。

Point! 業種によって仕事の内容は変わってくる。得意な分野をメインの仕事にしよう!

顧客の獲得

開業が成功するか失敗するかの分かれ目は、顧客の獲得にかかっていると言っても過言ではありません。特に開業したての時は業務や経営に慣れるという点でも、顧客は多ければ多いほどいいでしょう。ただ、新人からベテランまで多くの行政書士が悩んでいるように、永遠の課題でもあります。できれば開業前に顧客を付けていることが理想ですが、せめてどのように顧客を獲得していくのかのプランは事前に考えておきましょう。具体的な獲得方法については次章で解説します。

Point! 開業前に顧客がいれば理想だが、最低でも顧客獲得プランは作っておこう!

独立開業で明暗を分ける顧問先の獲得方法

 前章でもふれましたが、安定した顧客の獲得は安定した収入を得るための生命線です。ではどのような方法で顧客を獲得していけばいいのでしょうか。この章ではその具体的な方法を解説していきます。

紹介

弁護士や税理士、社労士等から行政書士の仕事を振ってもらったり、銀行や商工会議所、他の顧客を介して行政書士を探している顧客を紹介してもらう、一番スタンダードな方法です。紹介元との信頼関係を作るまでが大変ではありますが、そこさえクリアできれば他の集客方法と比べ比較的負担が少なく、人を介するので優良な顧客を獲得しやすい傾向があります。ただ、紹介はほかの行政書士、特にベテランの人がすでにパイプを作っていることが多いため、新人行政書士が入り込めるスキマはそれほど多くありません。

Point! 紹介は優良顧客が見込めるものの、新人行政書士の入る余地は少ない。

ホームページ集客

開業後すぐにとりかかれ、かつ新規顧客を比較的見込みやすい集客方法がホームページによるものです。口述しているセミナーやブログ等もこのホームページを介して行うことが多く、現在の情報取得はネットが主流であることからも必須のツールといえるでしょう。士業のホームページで集客をするノウハウを提供しているサイトはたくさんありますので、自分のスタイルに合ったものを勉強していきましょう。

Point! ホームページの作成は必須!集客の肝となる部分なのでしっかり作り込もう。

セミナー集客

行政書士の業務は一般の人から見たら専門的な知識や経験が必要なものが多いため、セミナーで勉強をしたいという需要は多いです。また、同業者や他士業の方がスキルアップのためにセミナーを利用するということもよくあります。この人たちに入口商品として知識や経験を土台にした情報を提供し、最終的に紹介の拠点や直接的に顧客を得るのがセミナー集客の方法です。開業したての新人行政書士がいきなり会場でセミナーをするのはハードルが高いですが、最近でははweb動画で一般の方向けにテーマを絞ったセミナーを行うこともできますので、他の集客方法と合わせて活用するといいでしょう。

Point! 新人行政書士はweb動画セミナーがオススメ。他の集客とミックスして使おう!

ブログで情報発信

ホームページでの集客は細かい更新によってアクセス数(接触回数)を伸ばすのがポイントですが、ブログによる情報発信が一番興味を引きやすく、また手軽にできてオススメです。ただ、最低でも週に2~3回は更新しないと同業者に差をつけられませんので、どういった情報をこまめに伝えていくかが大事になります。士業では法令改正や最新の動向などを発信しているところが多いのですが、業界では常識だけど一般の人はあまり知らない役立ちネタや申請書の書き方を超基本から解説、官公庁への申請であった話などは目を引くので、こういった他の人があまり出していない情報を提供していくといいでしょう。

Point! ブログはホームページ集客一番の武器。最低でも週に2~3回は更新しよう!

行政書士マッチングサイトの利用

ホームページやセミナーでの集客は金銭面でのコストパフォーマンスがいいものの、これらにかかる時間的なコストが非常にかかり、かけたコストに対してのリターンが読めないことも不安材料の一つです。そこでお勧めしたいのが行政書士マッチングサイトの利用。マッチングサイトとは、行政書士の仕事を依頼したい人が依頼内容にあった行政書士を探すことができるもので、ここに登録しておくだけで顧客のほうからアプローチがあるという仕組みになっています。時間的なコストは初期登録とアピールポイントのメンテンナンス程度のため他の集客と比べ非常に少ない負担で、金銭的なコストも月額制・成功報酬制など自分の集客したい顧客の数や経営状況に合わせてマッチングサイトを選べます。集客にぜひ利用したいシステムです。

Point! 効率良く新規顧問先を獲得するためにマッチングサイトを活用してみよう!

費用対効果の高い集客をしよう

登録するだけで顧問先の依頼が届くサイト「ミツモア」とは?

行政書士として安定した収入と成功を収めるために一番必要なことは「集客」です。でも、行政書士の勉強を継続しながら集客のノウハウを集め、実行していくのは至難の業。実際に行政書士の登録者抹消(≒廃業)は年間1,700件以上に及び、仕事は増えているものの競争も激化していることが伺えます。ですので、先述したマッチングサイトは時間・金銭の両面からみても、これから最も効率のいい集客方法として注目され始めています。

行政書士マッチングサイトの一つ『ミツモア』は、開業したての新人行政書士でも非常に利用しやすいサービスです。新人行政書士でも十分に収入を得られる可能性があるフィールドです。新しい集客方法の一つとして、ぜひ登録してみましょう。

実際に「ミツモア」を利用しているプロの声

 

川越相続行政書士事務所 – 埼玉県川越市大字古谷上

『ミツモアのサイトがあるのを知り、新規の顧客獲得の一環になればと思い登録しました。実は、このようなマッチングサイトがあるのを初めて知りました。困っている人と、解決できるプロを結びつける場があるのは、とてもすばらしいと感じています。登録して早々に一件成約できたんですよ。良いと思ったのは急ぎで探している方に、ピンポイントでアプローチが返せる所。そのせいかトントン拍子に話が進みました。専門外の案件に巡り会えるのもこのサイトのメリットだと思いました。良い経験になったのも嬉しいですね』